深く!楽しく!学べる登山 〜ヤマノボリへのやさしい手引き〜

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第4章 山どうぐを選ぼう!〜自分に合った装備の選び方・雨具編〜

キーワードは「防水&透湿性」

*鷲尾…さあ、次は雨具を選びましょう。

*齋藤…折り畳み傘じゃダメかしら?

*鷲尾…はい、登山では基本的に傘は差しません。

*齋藤…えー!何で?

*鷲尾…登山道って狭いですよね。すれ違う人や前後で歩いている人に傘がぶつかったり、風にあおられてバランスを崩したりすると危ないですよ。それに、傘を差しているということは片手がふさがった状態なので万が一転びそうになったりした時に、これまた危ない。

*齋藤…ポンチョなら、持ってるけど。

*鷲尾…ポンチョで覆えるのは上半身から膝くらいまでですよね。悪天候の時の山では横なぐりの雨や、時には下から雨が吹き上がってくることさえあります。そんな時にポンチョだと、下半身が濡れてしまうんですよ。

*齋藤…そうか、でも、そもそも運動してる時ってけっこう暑いよね。ちょっとくらい濡れた方が気持ち良くない?懐かしいな、高校の部活で土砂降りの日にみんなでランニングしたの…。

*鷲尾…齋藤さん、何部だった…?まあ、ともかくそれは青春の1ページに大事にしまっておいて下さい。第1章でお話したとおり、山は基本的に寒い。それにすぐにシャワーを浴びたり、着替えたりすることもできない。そんな状況で身体が濡れているってことは、場合によっては生命にかかわります。

*齋藤…そんな、大げさだな!

*鷲尾…まあ、標高も低くて行動時間も短い低山なら、そこまでシビアな事態にはならないかも知れないけど。でも考えてみて下さい、冬の寒い日のお風呂あがりに脱衣場に出ると、ブルブル震えるくらい寒いですよね?でも、バスタオルで身体を拭くと、かなりマシになる。身体の表面が濡れてるか乾いてるかって、それくらい違うんですよ。

*齋藤…うん、お正月に実家に帰った時のお風呂あがり、あれは寒かったな。

*鷲尾…ですよね。その身体が濡れた状態が、ただでさえ気温や体感気温が低い山の中で続くという状況が、どれほどしんどいか。北海道の山や日本アルプスなどの高山では、夏でも低体温症にかかって亡くなるっていう事故が、これまでもたくさんありました。

*齋藤…なるほど。私の青春の1ページは、山では通用しないってことね。

*鷲尾…(やっとわかってもらえたか)はい、なので登山ではこのようにジャケットとズボンに分かれた上下セパレートタイプの雨具(写真23)が必要なんです。

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写真23:上下セパレートタイプの雨具

*齋藤…わー!カラフルでかわいい♪(でも値札をみて)うわっ、高い!何でカッパが3万円もするの?上下に分かれた雨具、ホームセンターなら3千円くらいで売ってるよ。色はちょっとダサいけど。

*鷲尾…ですよね。登山用の雨具がなぜ高いかというと、「防水機能」と「透湿機能」の両方を兼ね備えているからなんです。

*齋藤…トウシツキノウ?糖質は控えめにね♪ってこと?

*鷲尾…あなた、ダイエットの必要ないと思いますけど…。じゃなくて透湿!他のスポーツもそうですけど、登山も(特に登りは)身体が熱を発しやすい、つまり汗をかきやすい。そして、汗をかいてしまうと、さっきの身体が濡れた状態になりますよね。これがまずいんです。500円のポンチョでも3千円のホームセンターの雨具でも、ビニールでできているから防水機能はある、つまり外から降ってくる雨は遮断できるんです。でも透湿性がないから、内側はビニールハウスの中にいる状態と同じで蒸れてしまって身体が汗だくになってしまうのです。

*齋藤…高い雨具は、蒸れないってこと?

*鷲尾…はい、ここに「GORE-TEX」っていうタグ(写真24)が付いているでしょう。このGORE-TEXゴアテックス)というのは、雨具の内側に貼ってある薄いシートの名前なんですけど、これにはとっても小さな穴が無数にあいていて、この穴の大きさがミソなんです。雨(水滴)と身体から発せられる熱気(水蒸気)を比べると、水滴の直径に対して水蒸気の直径って1700分の1くらいしかないんです。ゴアテックスにあいている穴の大きさは水滴よりは小さく、水蒸気よりは大きい絶妙な大きさになっているんですよ。外側からの雨は防いで、内側からの身体の熱気は逃がしてくれるんです。

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写真24:防水透湿性素材のパイオニアGORE-TEX

*齋藤…なるほど!だから防水機能と透湿機能の両方があるってことなんだね。

*鷲尾…はい、雨の中での登山中に身体を濡らさないために、両方の機能がある雨具が必要なんです。ちなみに、さっきのビブラムの靴底と一緒で、ゴアテックスも色んなメーカーの雨具に採用されています。あとはメーカー独自にゴアテックスと同じような防水透湿機能のある素材(※注5)を開発して、自社の雨具に使用しているところもあります。こういう雨具だと、少しお値段も安め(1~2万円台)で買えますよ。

※注5…ベルグテック(ミズノ)・ストームクルーザー(モンベル)・ディアプレックス(フェニックス)など

*齋藤ゴアテックスでも3万円と4万円のがあるのは、何か違いがあるの?

*鷲尾…ブランドのロゴ代(笑)。それだけじゃなくて、高い雨具だと立体縫製で身体にフィットしやすかったり、快適に使える機能が付いていたり、それなりの理由もあります。

さらに最近は、「防水機能」「透湿機能」に加えて「伸縮性」も兼ね備えた、より動きやすい素材の雨具も登場しています。

*齋藤…雨の時しか使わないのに、あんまり高いのを買ってもね。

*鷲尾…雨の時以外にも使えますよ。晴れていても風が強い時にウィンドブレーカー代りに使ったり、ゴアテックスのちゃんとした雨具なら初心者向けの簡単な雪山くらいなら対応できます。もちろん、普段の生活で着ても便利ですよ。

*齋藤…へー!じゃあやっぱりかわいいのを選ぼっと♪

*鷲尾…ですね。靴やザックで我慢した分、好きな色とかで選んでもいいと思いますよ。

 

☆第5章へ続く☆

 

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おまけ:子供用の雨具は雨の日の保育園の送迎にも重宝します♩