深く!楽しく!学べる登山 〜ヤマノボリへのやさしい手引き〜

登山に欠かせない様々な知識や技術…記事や動画で、ビギナー向けの登山のイロハからベテランにも役立つテクニックまで様々な情報が満載です☆

第6章 山でバテないために~トレーニングと水分・栄養補給~

日常でできるトレーニン

*齋藤…さあ、道具もウェアも揃ったし、山に行くぞ~!でも、いきなり行って大丈夫?

*鷲尾…まあ、標高差も行動時間も少ない低山なら、いきなり出かけても何とかなるかも知れないですけどね。でも、せっかくリフレッシュのために山登りにでかけて疲労困憊してしまったら、かえって逆効果になってしまいますからね。

*齋藤…高校時代に山岳部だったって言ってたけど、どんなトレーニングしてたの?

*鷲尾…普段は普通にランニングしてましたけど、河岸段丘の斜面にあるたくさん階段のある公園に行って走ってましたね。

*齋藤…やっぱり、平らなところじゃダメなんだ。

*鷲尾…まあ、平地でのランニングやウォーキングも心肺機能を鍛える面では、まったく無意味という訳ではないんですけどね。ただ、それだけだと登山に必要な足回りの筋肉が、鍛えられないんですよ。太ももの筋肉やふくらはぎの筋肉って、段差のある場所での登り下りをすることによって、鍛えられるんです。なので根性論かも知れないですけれど、駅やオフィスビルではなるべくエレベーターやエスカレーターを使わないで、階段で移動するっていう地道な積み重ねが、やっぱり効果的ですね。

*齋藤…なんか、地味だね。

*鷲尾…ええ。あと太ももの筋肉を鍛えるならスクワット、ふくらはぎの筋肉を鍛えるなら電車に乗っている時に吊革につかまりながら爪先立ちをする、そんなのも有効ですね。

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スクワットは身体で一番大きな筋肉であり、登りで必要な「大腿四頭筋」を鍛えるのに最適です

*齋藤…それ、毎日やらないとダメ?

*鷲尾…まあ、なるべく習慣づけた方が良いですよね。さっきお話した登山に必要な筋力って、何もしないと2週間くらいで元に戻ってしまうと言われています。ていうところからすると、2週間に1回くらいは登山をするのが理想なんです。

*齋藤…いきなり、月2回も山に行くのは無理だ。

*鷲尾…そうですよね。さっき言った段差(=高低差)のある状況でのトレーニングを、なるべく採り入れて欲しいんです。

*齋藤…ところで、そういう時って登山靴をはいてた方がいいの?

*鷲尾…いや、特に靴底の固い登山靴の場合は、それで舗装路を歩くとショックが強くてかえって足を痛めてしまう可能性があるので、普段の靴で良いです。むしろ身に付けておくといいのは、ザックですかね。特に泊まりがけの登山などで30ℓの容量のいっぱいまで荷物を入れると、ザックの重さが10Kg近くなることもあります。その重さに慣れるために、普段からザックを背負うことで、ザックを持ち上げる腕やザックを背負う肩・背中まわりの筋肉を鍛えることができます。私も、特に荷物の重い雪山合宿の前とかは、プールに通って上半身を鍛えてました。

*齋藤…なるほどね。とりあえず明日からは、エレベーターとエスカレーター使わないで通勤しよっと。

*鷲尾…えらい!その気構えで行きましょう!

 

水分補給と栄養補給

*齋藤…トレーニングしても、栄養不足でバテちゃったら意味ないよね?飲み物と食べ物ってどれくらい用意したら良いの?

*鷲尾…もちろん、季節やコースによっても変わりますが、大まかに言うと次の計算式が飲み物でも食べ物でも適用できます。

・体重×行動時間×5(単位は水分の場合mlもしくはcc/食べ物の場合はkcal)。

これで、だいたいの目安は計算できます。

*齋藤…えっと、私の体重は…。

*鷲尾…言わなくて良いです!(ちなみに両名とも40kg台のチビっ子コンビ)

例えば体重60kgの人が4時間の登山をする場合…。60×4で240。これに5をかけると1,200。つまり、水分なら1.2ℓは必要ということなんです。

*齋藤…そんなに飲まないといけないんだ。

*鷲尾…まあ、最後の「5」という掛け算は運動強度で決まるので、平坦なハイキングと急傾斜の登山では、若干変わりますけけど。でも、日帰りの登山・ハイキングなら500mlのペットボトルで十分って認識の人が多いと思うんです。それよりは多めの水分が必要ってことは覚えておいてください。

*齋藤…水分が足りないと、どうなるの?

*鷲尾…悪いことずくめです。熱中症や高山病も水分不足が引き金のひとつになり得ますし、そこまで至らなくても疲労の大きな原因です。

*齋藤…でも、山ってトイレも少ないし…。

*鷲尾…女性は特に心配ですよね。のどが渇いたら一気飲みするのではなく、こまめに少しずつ飲むのがおすすめです。一気に飲むと一気に出ちゃう、でもこまめに飲んでいる分には、そこまで頻繁にトイレに行かなくても大丈夫ですよ。そもそも、のどが渇くというのは身体が脱水のサインを出している状態なので、そうなる前に水分補給するのが大切です。最初はペットボトルでも良いですけど、水筒を使うとゴミが出ないし保温機能のあるものもあるのでオススメです(写真33)

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様々なタイプの水筒

あと汗をかくと水分と一緒に塩分も失うので、塩分補給も忘れずに。これも熱中症の原因になりますし、足が攣りやすくなります。スポーツドリンクとかでも良いですが、甘い飲み物は苦手っていう人は、チーズとかおせんべいとか塩分を含む食品で補っても良いですよ。

*齋藤…なるほど、食べ物は何がおすすめ?

*鷲尾…おにぎりとか菓子パンですかね。栄養学的に言うと炭水化物(=糖質)ですね。たんぱく質・脂質ももちろん適度に摂取してほしいのですが、これらは日常生活の身体づくりにも欠かせないので普段からしっかりとした食生活をしていることが前提です。その上で特に炭水化物がおすすめなのは、運動するためのエネルギーはこの炭水化物と呼吸で得られる酸素を消費して産まれるものだからなんです。あとさっきの水分と一緒で、できればこまめに食べてほしいです。一度に大量に食べると、その食物を消化するためにエネルギーが浪費されてしまいます。ですので、かさばるしこまめに食べられない駅弁みたいなものよりは、おにぎりや菓子パンをおすすめする訳なんです。

*齋藤…遠足みたいに山頂でお弁当を全部食べちゃうってのは、良くないんだね。

*鷲尾…そうですね。あとさっきの計算式で食事(kcal)の方ですが、これは登山中に消費されるエネルギー量なので、その式で出た数字をすべて登山中に食べないといけない訳ではありません。登山に出かける前の朝食をしっかり摂っておくとか、身体の中に蓄積されたエネルギーもありますので、だいたいその数字の6~7割くらいで十分です。ただし万が一のために非常食(日持ちのするお菓子など)は少し持って行きましょうね。

*齋藤…山で食べるおにぎり、おいしそう!

*鷲尾…ええ、ホントにおいしいですよ!

*齋藤…さあ!さっそく来月にでも山登りにいってみよー!

*鷲尾…楽しんできてくださいね!

*齋藤…ここまで来たんだから、連れてってよ^^

*鷲尾…りょ、了解です…。

 

☆第7章へ続く☆

 

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初めての登山は、奥多摩・御岳山でした…

 齋藤さんの初登山のレポートは、こちらをご覧ください!