深く!楽しく!学べる登山 〜ヤマノボリへのやさしい手引き〜

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第3章 山どうぐを選ぼう!〜自分に合った装備の選び方・ザック編〜

ザックの選び方

*鷲尾…普通はリュックサックとか呼んでいますが、登山の場合ザックと呼ぶことが多いです。

*齋藤…さっき靴で妥協したから、ザックは好きなのを選んで良いよね?

*鷲尾…あれ、愛着湧いたんじゃないんですか。ちょっとだけ、アドバイスさせて下さい。ザックの大きさには2つの基準があります。まずザックそのものの大きさ(容量・単位はℓで表される/どれくらいの荷物を入れたいかで決まる)、それから背負う部分の大きさ(背面長・単位はcmで表される/背負う人の身長や体格で決まる)、これが齋藤さんのザックを使う場面と体格で、ある程度絞り込まれています。

*齋藤…へー、そうなんだ!

*鷲尾…まずはだいたいの容量を選びましょう。要は何を入れるかで決まってくるのですが、登山のスタイルと期間の長さで決まります。日帰りのハイキング程度なら20ℓ前後で十分ですし、寝具が完備していて食事も出てくる山小屋であれば着替えなどの装備が増えてくるので30~40ℓ前後がおすすめ(写真18)、テント泊などで長期間山にこもるのであれば、寝袋(シュラフ)やテントや自炊のための食糧や食器なども入れなければいけないので60ℓ以上のものが必要になってきます。私は高校時代にはテント泊がメインだったので100ℓのザックを背負っていました(笑)。

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写真18:左が日帰り用・右が小屋泊まりの宿泊用のサイズです

*齋藤…じゃあ、日帰りで練習する時と、夏に泊まりでアルプスに行くのに2つのザックを買わなきゃいけないの?

*鷲尾…いえいえ、ザックに関してはある程度「大は小を兼ねる」が通用します。後で説明しますが、30ℓのザックに15ℓ分の荷物しか入ってなくても、スカスカでかっこわるくならない工夫がされています。齋藤さんの場合、当座の最終目標が夏の北アルプスの山小屋泊まりだから、30ℓ~40ℓくらいの容量で選んでみましょうかね。はい、これとこれとこれ…。

*齋藤…これは28ℓ、これは30+5ℓ、これは38ℓって書いてある。

*鷲尾…ザックの容量はメーカーによって基準も全然違うから、そこはおおまかで良いですよ。それより、この3つを背負い比べて見てほしいんです。登山用のザックは肩ベルト(ショルダーストラップ)だけでなく、腰ベルト(ウェストベルト)も使って身体に固定するんです。この肩ベルトから腰ベルトまでの長さ(=背面長)が、齋藤さんの背中の長さに合っているかが大事なんです。ザックの背面長が背中よりも短いと、このようにウェストベルトがおなかくらいまで上がってきてしまいます(写真19)。逆にザックの背面長が背中よりも長いと、このように肩ベルトが浮いて、すき間ができてしまいます(写真20)。ザック売り場には大きな鏡が置いてあるので、フィッティング(※注4)してみて、自分の身体に合った背面長を見つけましょう。

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写真19:ザックの背面長が身体より短い場合

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写真20:ザックの背面長が身体より長い場合

 ※注4…ザックは(1)ウェストベルト(2)ショルダーストラップ(3)ショルダースタビライザー(4)チェストベルトの順番でしめて身体にフィットさせます。(写真21)

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写真21:ザックのベルトの名称としめる順番

*齋藤…2番目に背負ったのが、身体にぴったり合う感じ。

*鷲尾…じゃあ、このメーカーだとSサイズが齋藤さんに合った背面長ですね。あと、このモデルは女性用なので、よりフィットするのかも知れませんね。

*齋藤…ザックにも女性用があるの?

*鷲尾…はい、同じSでも男性用よりは背面長が短めに作ってあったり、あと肩ベルトが女性の体格に合わせて工夫してあるんですよ。

*齋藤…まさに、山ガール向けだね!

*鷲尾…そうですね。あと自分に合う背面長のザックの中から、背面やショルダーベルトのパッドの厚みによる背負い心地の差や、ポケットの数や場所などの使い勝手で、選んでください。

*齋藤…さっき「大は小を兼ねる」って言ってたけど、ほんとに日帰りでも30ℓのザックで大丈夫なの?

*鷲尾…はい、このコンプレッションベルト(ザックの厚み・高さを調整する紐)を調整することによって、荷物が少なくてもそれに合わせたザックの厚みにすることができるんです。あとさっきの使い勝手の面で、30前後ℓ以上のザックだと大抵のものに「雨蓋」と呼ばれるフタが付いてます。頻繁に使うものは、ここに入れておくと便利ですよね。あと、30ℓ前後のザックだとあるものとないものがあるんですが、「2気室」と言ってザックを上下で分割して、下からも物を取り出せるモデルもあります(写真22)。これは、50ℓとかもっと大きいザックだと必ず付いているんですが、30ℓ前後に入れるくらいの荷物の量なら絶対に2気室じゃないとダメってことはありません。

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写真22:コンプレッションベルトと雨蓋・2気室

*齋藤…さっき「雨蓋」って言ってたけど、ザックは雨漏りしないってこと?

*鷲尾…いいえ、完全防水ではありません。なので、ザックカバーと言ってザックにカッパを着せてあげます。最近はザックカバー付のモデルが多いですが、付いてなくても別売で購入できます。

*齋藤…これはザックカバー付きだから大丈夫だね!

*鷲尾…ただし、ザックカバーも背面まではカバーしません。濡れたらホントに困るもの(お財布・携帯電話・着替えなど)は、衣類圧縮袋や料理用のジップ付ポリ袋とかに入れましょう。

*齋藤…はーい!じゃ、ザックはこれにしよっと。

 

☆第4章に続く☆