皆さん、こんにちは!山ガールになりたい女子・齋藤です。
今回は「番外編」として、登山だけではなく実は読書好きな私齋藤と、登山ガイドの鷲尾さんがお互いの好きな本について熱く語ります!
趣味の座談会で静かに燃えるお互いの「読書愛」の炎・・・。
あらためて自己紹介
登山ガイドの鷲尾です。
実は大学では日本文学科でした。
好きな作家は池澤夏樹です。
山ガールになりたい女子・齋藤です。
マンガ、エッセイ、コラム、小説、幅広く読みます。
好きな作家は寺山修二です。
熱すぎる!?2人の読書熱!!
*齋藤…前置きで恐縮ですが、今回は登山は関係ありません。。
私と鷲尾さんの共通の趣味が実は『読書』ということで、今回は好きな本や作家さんについて語りたいと思います。
*鷲尾…登山中の会話で時々話していたんですよね。
色々話していたら、会話が盛り上がったので、今回思いっきり語ってみましょう!という。
*齋藤…私の持ち込み企画です。
完全に趣味の座談会ですね(^^;
では、早速まいりましょう!
鷲尾さん自宅の本棚
お互いにとっての「読書」とは?
*齋藤…今はネットで本を購入出来、タブレットやスマホでどこでも本を読める時代になりましたが、私は書店や図書館に足を運んで、実際に本を手に取り、ページをめくり、「これもいいな」、「こんな作品もあるのか」と発見する時間がとても好きです。
趣味は、ズバリ「立ち読み」です。
書店を訪れる際は様々なジャンルのコーナーに行って、本棚を隅々まで物色します。
タイトルで惹かれる物、表紙のデザインで惹かれる物を手にとってパラパラとページをめくる・・・
本当に気に入った本しか買わないのですが、一度買った本は何度も読み返したりして、何年もとっておきますね。
コレクションみたいなかんじです。
本の項(ページ)をめくる行為と、本の紙の匂いを嗅ぐのが好きという。笑
古い紙独特の匂いって素敵ですよね・・・
*鷲尾…それは私も同感ですね。読書と同じくらい、音楽も好きなんですが…。
やっぱりCDはレコード店に行って買いたい派です。
最近は簡単にスマホやiPodに好きな曲だけダウンロードできる時代ですが、そして自分も結局は電車の中でiPodで聴く機会がほとんどなのですが、それでもCDの実物をレコード店で購入したい。
好きなアーティストが思わぬ新譜を出していたり、様々なジャンルのコーナーをうろついていると思わぬ掘り出し物が見つかったり、自宅でダウンロードするだけでは味わえない体験が楽しみです。
CDがずらっと棚に並んでいると、ワクワクします♪
それに…最近はアルバム単位でなく曲単位で試聴してダウンロードできるじゃないですか?
あれって、すごく安易でアーティストに対して失礼だと思うんです。
アルバムを創る時って、きっとそのアーティストは曲調やテーマに応じて、起承転結を考えてこだわり抜いて曲順を決めているんだと思うんですよ。
これって、本のストーリー構成と相通じるものがありますよね。
それを無視して「つまみ食い」はどうかと。なので、CDを購入して少なくとも1回は、冒頭から最後まで、曲順どおりに通して聴くようにしています。
アルバムジャケットを手にとって、それぞれの曲を演奏しているミュージシャンの名前を確認したり、アーティストが各曲への想いを語るライナーノーツを読むのも、CD実物を購入するならではの楽しみです。
鷲尾さん自宅のCD棚
おっと!読書の話でしたね。
私は、そんなにハイペースに新刊を購入する派ではありません。
むしろ、お気に入りの作品をローテーションで、何度でも再読します。
展開や結末がわかっていても、読む度に新しい発見があったり、文章の表現や構成に唸らせられたり、それくらいの筆力がある作家さんが好きですね。
好きな作家、作品について
*齋藤…私は雑食なので幅広く読みますが、ざっと・・・
・TUGUMI(吉本ばなな)
・ポケットに名言を(寺山修二)
・毛皮のマリー(寺山修二)
・不道徳的教育講座(三島由紀夫)
・猿ヶ島(太宰治)
・山月記/名人伝(中島敦)
・草之丞の話(江国香織)
・サロメ(オスカー・ワイルド)
・マクベス(ウィリアム・シェイクスピア)
・時計じかけのオレンジ(アンソニー・バージェス)
文章というか、その作品の中の表現だったり言葉遣いが好きですね。
現代作家より、古典作家の作品の中に散りばめられた言葉の中から好きな表現を見つけて、繰り返し読むのが好きです。
冒頭にも書きましたが、寺山修二は好きな作家さんの一人です。
大学時代に「カラマーゾフの兄弟」が流行し、私も挑戦しましたが、あっという間に挫折しました。笑
ただ、寺山修二の「ポケットに名言を」の中に、ドストエフスキーの作品中の名言が数多く出てくるのですが、未だに何度も読み返しますね。
ドストエフスキーの作品はいつか読破してみたいのですが・・・ロシア文学はなかなか難しいですね。
人物相関図が頭でイメージ出来ない。
*鷲尾…古典からエッセイまで、幅広いですね!
私も雑食ですが、ざっと・・・
・すばらしい新世界(池澤夏樹)
・中国行きのスロウボート(村上春樹)
・千年旅人(辻仁成)
・ユリイカ(青山真治)
・白河夜船(吉本ばなな)
・葉桜の日(鷺沢萌)
・リヴィエラを撃て(髙村薫)
・午後の曳航(三島由紀夫)
・濹東綺譚(永井荷風)
・死者の書(折口信夫)
それぞれの作家さんの他の作品も好きですが、敢えて代表作を外したものもあります。
作家さんによって異なりますが、やはりそれぞれの語り口調(文体)そのものが自分の好みに合う人なので、同じ作家さんでこれ以外の10選も挙げられますよ。
共通点は・・・強いて言えば、情景が目に浮かぶ文体、易しくて読みやすいけれども深くて味わいのある文体、ですかね。
髙村薫さん以外にも、大沢在昌さん、横山秀夫さん、石田衣良さんなどの、どちらかというと「ミステリー」にカテゴライズされる作家さんも好きです。
皆さんベストセラー作家ですが、「読ませる」「物語に引き込む」文章力はさすがだと思います。
*齋藤…「情景が目に浮かぶ文体」は私もかなり大事にしています。
地頭が悪いので、人よりも文章の読解に時間がかかるんですよね・・・
なので、如何に自分の中にスーッと入って来る文章か、物語に自然に引き込まれるかは大切です。
私は昔から「さくらももこ」さんのイラストと文章が好きで、今でもエッセイを読み返すのですが、ある旅行記のイラストや食べ物の表現、2次元から広がる3次元への想像に、食欲が駆り立てられたり、まるでその旅先の温度感や空気感まで伝わって来るような表現で、はっきりと脳裏に残っています。
五感を刺激する表現って好きですね。
五感を刺激する表現
*鷲尾…挿絵などがあれば別ですが、基本的には文字情報しかなくて想像を膨らませないといけない領域が広いのが、かえって読書の楽しみですよね。
視覚を刺激する文体
吉本ばななさんはあらゆる点で優れた文体ですが、私は視覚的な情景描写に惹かれます。
物語に描かれた舞台の風景がありありと浮かんでくる表現はもちろんなのですが、登場人物達が夢や妄想で体験する不思議な世界の情景までも想像できると言う面で、視覚を刺激する文体ですよね。
聴覚を刺激する文体
村上春樹さんは作家デビュー前にジャズ喫茶を経営されていたこともあり、ジャズのレコードコレクションを元にエッセイを執筆したり、作品にクラシックの曲が採り上げられると、その作曲家や曲が脚光を浴びたりと、音楽業界にも影響力のある人です。
こうした実在の曲も勿論ですが、「海辺のカフカ」に出てくる2つの不思議なコード(=和音)や、「スプートニクの恋人」に出てくる不思議な祭りの音楽など、架空の音楽でありながら想像を掻き立てる細密な描写で聴覚に訴えてくるものが好きですね。
味覚を刺激する文体
これまた村上春樹さんですかね。主人公が様々なものを食べるシーンがあらゆる作品に出てきますが、どれも美味しそうで味覚を刺激しますよね。
そして、ひとりで食べていても誰かと食べていても、独り言(想像)や会話が必ずと言っていいほど併行して描写されていて、「食べる」行為の立ち位置が確立されている。
食べるだけでなく主人公自身が料理を作るシーンもよく出てきますが、定番のレシピどおりでなく、ちょっとひと工夫している様子が、これまた楽しい。
「ダンス・ダンス・ダンス」に出てくる、はんぺんをワサビ漬で和えたおつまみは、自分でもたまに作りますよ。
嗅覚を刺激する文体
池澤夏樹さんは、ご自身が沖縄に移住されたりした事もあって、南太平洋の島々を舞台とした作品が数多くあります。
自分自身はこうした地域を旅した経験はなく、海よりも山が好きな人間なのですが・・・。
そんな私であっても、南国の温かくもったりとした潮風や、マアやタロイモなどの料理の匂い、果物の香りまで、何かしら物語の中の空気を自分の肺いっぱいに吸い込んだ気分に浸れます。
触覚を刺激する文体
髙村薫さんはまるで映像を見ているような緻密な描写が特徴ですが、私は触覚や肌の感覚に共感する部分が多くあります。
「照柿」で描かれる、真夏の大阪の街や福生の製鉄工場の熱処理棟の描写は、読んでいるだけで息苦しいくらいの暑さを覚えます。
スパイ小説や警察小説では、登場人物が撃たれて銃創を負ったり目隠しをされて誘拐監禁される場面も登場するのですが、これまた自分がその立場に置かれたような痛みや怖さを感じますね。
*齋藤…さすが!私とは読んでる本の数が違います。
例に挙げる作品が無数に出てくる、作者の背景に至るまで詳しいところは、さすが文学部出身です。
鷲尾さんは、私が読んだ事の無い作品も多数紹介して下さっていますが、読むと納得というか、フィジカルで感じる表現に強く共感する部分は、お互いに感性が似ているのでしょうね。
*鷲尾…そうですね。
だから齋藤さんも、山へ行くと五感全開でアドレナリンMAXになるじゃないですか。
低山で危険な場所は少ないですが、ある意味で「クライマーズ・ハイ」みたいな。
*齋藤…そういえば、鷲尾さんは「クライマーズ・ハイ」も読んだ、って言ってたよね。
山に関する小説でお気に入りがあれば教えて下さい^^
ようやく山の話が出てきました・・・
*鷲尾…横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」はロッククライミングの聖地・谷川岳一ノ倉沢と日航ジャンボ機墜落事故の現場・御巣鷹山のふたつの『死の山』がうねるように絡み合いながら、事故の取材に奔走する新聞記者たちの人間模様が見事に描かれています。
冒頭とラストシーンは、事故から十数年を経て年老いた主人公が、いよいよ一ノ倉沢に登攀するのですが、いったん読み始めると最後まで止まらない勢いで読んでしまいますよ。
*齋藤…確か、映画にもなりましたよね。
*鷲尾…齋藤さんの好きなシブい役者さんがいっぱい出てきますよ!
主演は堤真一さんですが、堺雅人さんとか、遠藤憲一さんとか、田口トモロヲさんとか、みんなカッコ良かったなあ・・・。
*齋藤…そうそう!私は映画から作品名を知ったので、そちらの印象の方が強いです。
*鷲尾…髙村薫さんの直木賞受賞作「マークスの山」は、南アルプスの北岳が舞台です。ここで起こった事件の真相が、最後のクライマックスで一気に明らかになるくだりは、早く次のページをめくりたい興奮状態を体感できますよ!
警察小説として、組織の壁の中で闘う複雑な人間模様を描いた社会派小説として、髙村薫さんの出世作であり代表作と言える素晴らしい作品です。
白峰三山や鳳凰三山を縦走した事のある人なら、より舞台となる南アルプスの情景が思い浮かんで楽しめるのではないでしょうか。
*齋藤…何か、怖くて難しそうだね・・・。
*鷲尾…そんな人には、わたしの好きな作品でもご紹介した、池澤夏樹さんの「すばらしい新世界」をぜひおすすめしたいですね。
舞台となるヒマラヤ山麓の小国は架空のものですが、ネパール・チベットのヒマラヤ山間部の暮らしが活き活きと描かれています。
電気も水道もない僻地の寒村に、日本人技術者が風車を建てて発電と灌漑を試みるストーリーなのですが、真の意味での「エコロジー」や「人間らしい生き方と文明社会」についても深く考えさせられる、深~い内容が含まれています。
文庫本で700頁以上ある大作ですが、気負わずに読んでみて下さい^^
*齋藤…ロシア文学よりは、挑戦しやすいかな・・・。
*鷲尾…ですね・・・。
他にも、深田久弥さんの名著「日本百名山」をはじめ実際にその山に登ってみての随想や、伝説的なクライマーたちの自伝や伝記もオススメですが、今日はどちらかと言うとフィクションやエッセイが話題の中心なので、また別の機会にご紹介しましょう。
やっぱり、山に行きたくなってきた・・・
*齋藤…書を捨てよ、山へ出よう♪
山で五感を更に研ぎ澄ませば、私の読書の読解力も上がるかもしれない!
*鷲尾…書は捨てなくても良いですが、そろそろまた登山へ出かけましょうか^^
*齋藤…えいえいおー!いつでも準備OK!
こうして、我々は次なる山へ向かったのであります…。
*私たちの登山記はこちら✨